みなさんと暮らすわんちゃんの『得意なことや好きなこと』には、何がありますか?
など、どんなわんちゃんにも、沢山の得意なことがあるかと思います。
ちなみに、うちのわんず達の『得意なことや好きなこと』は下記の通りです。
うちの子たちも含め、彼らの『得意なこと・好きなこと』には、犬種ならではの性質も大きく関与している可能性があります。
また、彼らの『得意なこと・好きなこと』は場合によっては危険と隣り合わせでもあります。
そこで今回は、牧羊犬であるボーダーコリー、我が家の”天”における『車追い』に悩まされた日々をメインにご紹介していきたいと思います。
人間と犬の歴史
いま私たちと暮らすわんちゃんたち(イエイヌ※)は、約1万5000年前にオオカミから分かれました。
(※)犬は分類上、「ネコ目(肉食目)・イヌ亜目・イヌ下目・イヌ科・イヌ亜科・イヌ属・タイリクオオカミ種・イエイヌ亜種」に分類されているイエイヌです。
現代の犬種は、この数百年間に作られました。
大昔のオオカミは、人間による家畜化の進化の過程で遺伝子の変化を繰り返しながら、人間や、人間が作り出す環境に慣れていきました。
イヌは常に人間との共存の中で、役割・仕事を与えられてきました。
代表的なものとして、下記のような種類があります。
(※アニコム損害保険株式会社 「犬の歴史と種類について」より抜粋)
例えば、ボールやおもちゃを咥えてもってきてくれるわんちゃんは、狩猟では獲物を回収する仕事をしていた犬種かもしれません。
不審な人が家や飼い主さんに近づくと吠えて撃退してくれるわんちゃんは、護衛をする仕事をしていた犬種かもしれません。
泳ぐのが上手なわんちゃんは、水鳥の狩猟のお手伝いを仕事としていた犬種かもしれません。
走るのが早い、フリスビーが上手なわんちゃんも、狩猟のお手伝いを仕事としていた犬種かもしれません。
甘え上手なわんちゃんはきっと、人が愛情を注ぎ、飼い主さんの傍らで心を癒すことが仕事として、進化した犬種かもしれません。
一概に犬種による特性、と決めつけることはできませんが、
彼らの『得意・好きなこと』は、人間が彼らを、仕事や生活のパートナーとしてより良い方向へ進化・交配させてきた結果、犬種として残っている本能が大きく反映されているのは確かですね。
わが子たちの『得意・好きなこと』も、犬種としての本能と見事にマッチしています。
牧羊犬の車追い
さて、前置きが長くなりましたが、犬種としての本能や特徴は、人間との暮らしにおいては危険が伴うケースも出てきます。
我が家には、牧羊犬が2頭います。
シェットランドシープドッグのしおんと、ボーダーコリーの天です。
牧羊犬が持ち合わせている『追跡本能』には、動いているものを追いかける習性がります。
フリスビーをしているときには楽しいこの本能も、裏目に出ることがあります。
それは、『車』です。
走っている車やバイクに対して、この本能を発揮してしまうと本当に危険です。
飛びかかろうとして相手にケガでもさせてしまったら大変ですし、引っ張って飼い主を転ばせてしまう可能性もあります。
わんちゃん自身が車に激突してしまう可能性もあります。
本能行動がゆえに衝動性があり興奮状態に入ってしまうため、制御がとても難しいとされています。
しかし、事故やトラブルを防ぐためには、なんとしても対処しなければならない課題のひとつです。
牧羊犬はみんな車追いするの?
本能といっても、そこはやはり個体差が存在します。
全く車に反応しない子もいますし、車には反応しないが電車には反応する子、自転車だけに反応する子、反応はするものの気にする程度で引っ張らない子・・・など様々です。
ちなみに、先代犬も含め、我が家の牧羊犬3頭は以下のような感じです。
【かのん(ボーダーコリー)】
ほぼ車追いなし。特定のトラック、自転車にのみ反応。
【しおん(シェルティー)】
車追いあり。引っ張り癖あり。トラック・自転車・バイクには興味なし。
【天(ボーダーコリー)】
極度の車追いあり。すれ違う車すべてに飛びかかろうとする。自転車やバイクには興味なし。
かのんは”宅配のトラック”に極度の反応を示しました。これは追跡本能というよりも嫌な思い出があったのかもしれません。
通常のお散歩では、車通りの激しい道でも問題なく歩くことが出来ていました。
しおんは、子犬の時から車追いがありました。車通りの道では常に引っ張るため本人も飼い主も苦しい思いをしました。
現在も車追いはしますが、あまり力は強くないため飼い主側で制御しながら普通にお散歩が出来ています。
困ったのが天です。「極度の車追い」と「力の強さ」は、子犬の時から心配の種でした。
しつけの入りやすい生後5か月ごろから、トレーナーさんを探し、トレーニングを開始しました。
そんな天のトレーニングを通して、車追いに対して現在どのような対処をしているのかご紹介します。
先にお伝えしておきますが、『車追いの克服』はできませんでした。
しかし、『車追い』と付き合いながら、無理なくお散歩をすることは出来るようになってきました。
いくらトレーニングをしても改善されず、疲れてしまう方も多いかと思います。
一番の目的は、”安全に楽しくお散歩をすること”です。
色々な方法がある中で、わたしたちの方法が何かのヒントになれば幸いです。
車追いする天
車追いする子にも、色々なタイプがあると思います。
天は、一度でも車の通った道をすべて記憶しています。
そのため、”ここは車が来る道だ”と刷り込まれた後は、その道に行くとすぐに戦闘モードに入ります。
耳は前を向き、車の音に集中します。
車が近づいてくる気配を感じると、集中してスタンバイモードに入ります。
こうなってしまうと、どんなに声掛けをしても全く耳に入りません。
車が通りすぎるタイミングで、飛びつこうとします。
もしリードが外れたら、確実に事故を起こすレベルです。
トレーニング施設探し
天がお散歩デビューをしてから2か月ほどで、天の車追いへの恐怖を感じ始めました。
まだ子犬なのに、この力強さで引っ張るということは成犬になったら一体どれだけ危険なのだろう。
そう思い、インターネットでトレーニングしてくれる施設やトレーナーさんを検索しました。
そこで驚いたことは、まだ5か月の子犬にも関わらず『ボーダーコリーの車追い』に関するトレーニングは事前に断られてしまうケースもあるということでした。
訓練所や預けてお願いするトレーニングではなく、出張トレーニングで検討していたため、
期待する効果が出ないと判断された可能性ももちろんありますが、『車追い』という本能を制御するトレーニングがいかに大変なのかを、申し込む時点で痛感しました。
最終的に、個人でトレーニングを行っているトレーナーさんに出張トレーニング(全15回コース)でお願いすることに決めました。
そして、天のトレーニングが始まりました。
初めてのトレーニング
まずは、事前のカウンセリングからはじまります。
天の普段の様子を観察し、どのような性格なのかを見極めてくれます。
普段通りの姿を見るため、家の中でカウンセリングが行われました。
さすが、というべきでしょうか。
我が家のわんずたち、皆がトレーナーさんにメロメロになりました。
当たり前ですが、扱いが上手い・・・。
今困っていることや、今後どうなってほしいかもヒアリングしてもらい、その日はトライアルトレーニングも行いました。
トライアルトレーニングでは、アイコンタクトやリードの扱い、褒めるタイミング、声掛けのタイミングなどのアドバイスをもらいながら、普段のお散歩コースを一緒に歩いてもらいました。
トライアルトレーニングでの天は、とにかく楽しそうでした。
そんな楽しそうな天を見て、”本人が楽しくトレーニングできるのならば”と思い、下記の内容で申し込みをしました。
毎週のトレーニング
トレーニングは、間隔をあまり空けずに行うことが大事です。
よほど外せない用事がない限り、毎週1回出張トレーニングに来てもらいました。
トレーニング日までの間は、自分たちで教わったことを復習しながら、みんなのお散歩が終わった後に天だけ居残りして個別トレーニングを行いました。
トレーニングの様子
天は、トレーナーさんの言うことはよく聞きました。
コマンドのタイミングも、さすがプロ。
天が、車や他のことに気が行かないように”気分をのせること”もとても上手でした。
トレーニングの結果
トレーニングの結果は、以下の通りです。
そうなのです。
結論から申し上げると、『車追い』は全く解消されませんでした。
それどころか、トレーニングのたびに車通りの多い道路へ行くため、トレーニング前よりも車への反応が酷くなってしまいました。
トレーニングではない時にも、その道路がある方向へ歩き出すとその時点で興奮状態・緊張状態に入り、車が来なくても引っ張るようになってしまいました。
また、トレーナーさんと飼いぬしの間で、信頼関係が築けなかったこともトレーニング失敗の要因にあると思います。
トレーナーさんは、とにかく遅刻が多い人でした。
出張で来ていただいているので、ある程度は仕方がないのですが、当たり前に毎回遅刻してくることや、事前に遅刻する連絡がないケースもあり、外で待ちぼうけとなることも多々ありました。
また、自身の感覚でトレーニング行うため、飼いぬしに教えることがとても苦手な人でした。
出張トレーニングは、毎日の飼いぬし側でのトレーニングが重要となります。
質問をしても、なかなか的を得ない説明しか返ってこないことにも徐々に不安になっていきました。
それでも天はトレーナーさんが大好きでしたので、とりあえずは続けましたが、芳しい効果が出ないことも相重なり、15回を終える前にトレーニングは終了してもらいました。
15回分前払いなので、当然お金は戻ってきません。
それでも、回を重ねるたびに車追いがひどくなる天と、そのやり方を続けるトレーナーさんに違和感を感じてしまい、このトレーニングは終了しました。
再度トレーニングを検討するも断られる
前回のトレーニング後、色々な方法で独自にトレーニングを重ねるものの、一向に車追いは治りません。
天も、1歳6か月になりました。
このままでは、『お散歩』自体が苦痛になってしまう。いや、既になりかけていたかもしれません。
そこで、もう一度天のトレーニングを検討しました。
今回は、訓練所やお預けでのトレーニングも視野に入れ検討しました。
そこで、思いもよらぬ壁にぶつかりました。
それは、『受け入れ拒否』でした。
いくつかのトレーニング施設に天のトレーニングを申し込みましたが、1歳6か月では車追いのトレーニングをするには遅すぎるため、期待する効果を得られないという理由で断れられるケースが出てきました。
おそらく、一度トレーニングをしたが解消されなかったという過去も踏まえて、受け入れを拒否されたのだと思います。
本当にショックでした。
偶然がもたらした、トレーナーさんとの出会い
ほぼ諦めかけていたそのころ、天をよくドッグランに連れて行っていました。
天は、社会性が少し乏しいわんこでした。
多頭飼いだからといって、他のわんちゃんもオールOKというわけではないのです。
わたしたち飼いぬしは、多頭飼いで他のわんずとも生活できている天をみて、
完全に油断していました。
他のわんずの時は、キンダーガーデンに通わせるなどして社会化トレーニングをしましたが、天の時はしませんでした。
赤ちゃんの時は人が大好きで、だれかれ構わず尻尾を振っておなかを出し、うれしっこまでしてしまう天でしたが、1歳を過ぎたあたりから徐々に慎重になり、警戒心も強くなっていきました。
天は、外部のわんちゃんや人間に対して、とても臆病でよく吠えてしまいました。
そんな天をドッグランに連れていき、徐々に社会性を身に着けてほしいという飼いぬしの希望で、天だけ連れていくことが増えました。
ある日、いつものようにドッグランで天を遊ばせていたところ、近くのドッグカフェの店員さんがチラシを渡しながら話しかけてきてくれました。
そこのドッグカフェでは、しつけ教室も行っているということで、トレーナーさんが話を聞いてくれることになりました。
そこにいたトレーナーさんは、天をトレーニングしてくれた人とはある意味真逆の考え方をする人でした。
『車に興奮してしまうのならば、車のいない道をお散歩させてあげて』
『私の飼っている犬は、他の犬が苦手だからドッグランには連れていかないよ』
目から鱗でした。
犬のしつけに関しては、どの本を見てもどのサイトを見ても『社会性を身につけましょう』
『引っ張り癖を治しましょう』と書いてあります。
車追いをするのならば、車追いをしなくなるまでトレーニングをしなければならない。
他の犬が怖くて吠えてしまうのならば、もっと他の犬と触れ合わせて慣れてもらわなければならない。
そう思って、必死にやってきました。
虫嫌いな人が、毎日虫のそばにいれば平気になる?
この言葉が一番腑に落ちました。
『車追い』は牧羊犬の本能です。本能をトレーニングによって抑制・コントロールすることは出来ても、そのことに対してのストレスが消えることはありません。
虫嫌いな人間が、虫を克服しようと毎日虫のそばにいれば、ある程度は慣れるかもしれません。
しかし、虫がそばにいるという嫌な気持ちはストレスとして残りますよね。
『車追い』も『犬嫌い』も、その子が本来持っている性質や気持ちです。
そこまでして、車のいる道路を散歩する必要性があるのか?
そこまでして、他の犬と触れ合う必要があるのか?
ストレスを感じさせてまで・・・?
お散歩が嫌いになってしまうまで・・・?
その日、そのトレーナーさんと近くの公園を長いリードを使用して、天のペースでゆっくりとお散歩させてみました。(もちろん、人も車もいない場所でですが)
天は引っ張りもせずとても落ち着いていました。
それどころか、ある程度わたしたちと距離が出来ると、自分から様子を伺い戻ってきました。
そこで、沢山褒めてあげました。
天は、お散歩をとても楽しんでいました。
飼いぬしの緊張は、わんちゃんにはすぐに伝わります。
飼いぬしが『車が来るかもしれない』、とキュッと強くリードを握ることで、
天は『車がいるんだ!警戒しなきゃ!』とスイッチを入れてしまいます。
車なんかまったく見えない場所でも、そんな飼い主の仕草だけで緊張してしまうのです。
その後私たちは、お散歩のコースを変更しました。
車の来ない道を、何週も回るコースにしました。
”わんちゃんは色んなにおいを嗅ぎたいもの”
”いつも同じコースでは飽きてしまう”
そういう情報から、お散歩の道は定期的に変更しマンネリ化しないようにしていました。
しかし、神経質な天にとっては歩き慣れた同じコースを回ることで穏やかにお散歩ができるようになりました。
それどころか、外で一切トイレをしなかった天が、お散歩コースを変えてからはトイレもするようになりました。
天には、天にあったお散歩が必要だったのです。
今でも、車の通らない道を優先的に選んでお散歩をしています。
休みの日には、交通量の多い道路は車で移動し、車の危険のない公園内をゆっくりお散歩します。
天の車追いの現在
お散歩コースを変えたことで、車追いや引っ張りに関してのストレスはかなり軽減されました。
しかし、お散歩中にまったく車と出くわさないということはあり得ません。
その際は、まずは飼いぬしが車に先に気づき、車が通りすぎるまで天に『まーて』といい続けます。
以前よりも、興奮していても飼いぬしの言葉が少しは耳に入るようになっており、
興奮して引っ張りはするものの、だいぶん力を加減するようになりました。
まとめ
わんちゃんの苦手を克服させるのではなく、飼いぬしがよく気を付け声掛けをし、危険な場所には連れていかないこと。
わたしたちは、そのことを徹底することにしました。
苦手を克服するだけが道ではなく、どう付き合っていくかが大事なのだと思います。
お互いが幸せになれる道を、これからも模索しながらわが子たちと暮らしていきたいと思っています。
今回のお話が、少しでも参考になれば幸いです。
大変さは足し算、楽しさは掛け算以上。
皆さまにとって、素敵なわんわんライフになることを願って。
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