2022年6月1日に「マイクロチップの義務化」が施行されましたね。
施行日の前後は、ニュースでもこのことが連日取り上げられていました。
これをきっかけに、大もとの法律「改正動物愛護管理法」について少し調べてみました。
わんこの飼い主として、知っておきたいポイントは以下の4つです。
- 犬を迎え入れる場合は、生後8週を経ってから
- 犬が子どもを産んでも育てられない場合、避妊去勢手術をしなければならない
- 虐待・ネグレクト(放置)は厳罰を受ける
- マイクロチップ登録内容に変更があった場合、届け出なければならない
それぞれについて私の調べた範囲ではありますが、お役に立てれば幸いです。
改正動物愛護管理法とは
改正と付いているので、大もとは動物愛護管理法です。
この法律は、1973年(昭和48年)に動物の愛護と適切な管理を目的として議員立法により制定されました。
その後、定期的に改正がなされ、今回は4回目の改正法となります。
今回の改正法は2019年6月12日に公布され、2022年までに段階的に施行していきました。
2022年6月施行のマイクロチップの義務化は、この最終項目です。
今回の改正の目的は以下の2つです。
- 動物取扱業のさらなる適正化
- 動物の不適切な取扱いへの対応の強化
パピーミル(子犬工場)と呼ばれる悪質なブリーダーや、動物虐待などに対して、より厳しい措置が取られるようになりました。
今回の法改正、施行を踏まえて、また5年後に改正がなされるとのことですので、今後も飼い主として注意していきたいですね。
8週齢規制
出生後56日(8週)を経過しない犬猫の販売を制限する
改正前は49日(7週)でした。
この目的は2つです。
- 成長後の問題行動を予防するため
- 感染症のリスクを減らすための免疫力を上げるため
わんこが母親やきょうだいから、社会性を身につける時期は、生後3~12週だと言われています。
早すぎる母犬からの分離は、脳の発達を損ない、外的刺激への対応や社会性の習得に悪影響を及ぼすとされています。
また、免疫をつけるためのワクチン接種の1回目が8~9週齢が推奨されていることもあり、この規制に改正されたようです。
生まれたばかりの子犬は、見た目も可愛く売れやすいという理由から、今までは7週齢のわんこがペットショップなどで販売されていました。
このことから、ペット業界などの強い抵抗があり、改正までにかなり難航したようです。
実際、生後8週齢規制導入に向けての検討が、環境省動物愛護部会で始まったのは2005年だったということです。
そこから改正まで、何と14年もかかったことになります。
ただ、この8週齢規制は特例があります。
それは、日本犬は7週齢でもOKという特別措置です。
日本犬というのは、天然記念物指定犬(秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、北海道犬、四国犬)を指します。
なぜ日本犬だけ?と疑問に思いませんか?
発端は、「秋田犬保存会」の意見から始まったそうです。
秋田犬はほとんど一般に流布していない。
ブリーダーとの長い付き合いの中で譲ってもらっているのだから、規制はしないでくれ。
そこから「日本犬保存会」も加勢し、日本犬は規制の対象外とするよう、強い働きかけがあったそうです。
その言い分は以下のような内容です。
- 日本犬は洋犬と比較すると狼のDNAと近い
- 日本犬は親きょうだいとの早期引き離しが心穏やかになり、人間社会の中で安定して暮らすことができる
- 十分な知識と経験がないと日本犬の保存には適さない
私は、この内容を読んで益々疑問が膨らみました。
それって日本犬に限ることなの??
まず、狼のDNAと近いという部分ですが、狼=原始的な犬種と置き換えるとします。
ジャパンケンネルクラブが定義している「原始的な犬」は5Gのスピッツ類となります。
ここには、日本犬以外にもチャウチャウ、シベリアンハスキー、スピッツ、ポメラニアンなどの「洋犬」も含まれています。
次に「早期引き離しが安定して暮らせる」という点ですが、わんこの社会化は人間の中で学ぶものではなく、同じわんこ同士で教えられるものではないのでしょうか。
最後に「十分な知識と経験がないと日本犬の保存には適さない」のは、引き渡しを1週間前倒しする理由との関連性が不明瞭ではないかと思うのです。
色々な記事を読んでも、私には日本犬のみを特例にする理由が理解できませんでした。
しかし、この2つの保存会の強い抵抗で、法改正自体が流れてしまう可能性もあったため、特例措置は苦肉の策だったようです。
この特例も、ブリーダーが一般の飼い主に販売する場合のみ適用されるようで、同業者やペットショップへの販売には8週齢規制が適用になるとのことです。
わんこの小さい頃は、無条件で可愛いですよね。
しかし、それだけのために成長や免疫に悪影響を及ぼすことは、飼い主の本望ではありません。
わたしたちお迎えする側ができることとして、生後8週までは、母犬やきょうだい犬と一緒に過ごすことを見守って、決してそれ以前にお迎えしないことです。
そして、法令を守らない販売者とは関わらないことが大切です。
需要が減れば、供給もなくなります。
小さなことかもしれませんが、それが大きなことに繋がることを願い、できることをしていきたいですね。
動物の適性飼育のための規制の強化
適正飼育が困難な場合の繁殖防止の義務化
飼い犬が出産した子犬を適正にお世話できないようであれば、避妊去勢手術をしなければならない。
これは主に、多頭飼育崩壊を防ぐ目的があります。
適正なお世話ができないことは、虐待とみなされます。
しかし私は、多頭飼育崩壊に限らず、妊娠する女の子のわんこ同様、男の子のわんこにも対策をしたほうが良いと考えています。
去勢をしていれば、ドッグランなどで飼い主が目を離したすきに、他のわんこを妊娠させるリスクを回避することができます。
相手のわんこが妊娠してしまった場合、当事者でない飼い主が果たせる責任は限られてしまいます。
避妊去勢については、色々な考えがあると思いますが、この法改正の観点からも、それぞれのご家庭で話し合う機会となれば幸いです。
動物虐待に対する罰則の引き上げ
主な変更点を表にしました。
改正前 | 改正後 | |
殺したり傷つけた者 | 懲役2年以下、もしくは罰金200万円以下 | 懲役5年以下、もしくは罰金500万円以下 |
虐待、遺棄したもの | 罰金100万円以下 | 懲役1年以下、もしくは罰金100万円以下 |
改正法では、虐待に対する懲役や罰金が引き上がったことと、虐待の具体的な定義づけがされたことがポイントです。
特に、虐待の定義付けは、ネグレクト(放置)も明文化されましたので、この点はかなり前進したのではないでしょうか。
積極的(意図的)虐待:やってはいけない行為を行う、行わせる(殺傷)
ネグレクト:やらなければならない行為をやらない(放置)
これにより、ネグレクトの結果、飢え死にした動物に対する立件ができるようになりました。
身近で虐待が疑われる行為を見かけたら、警察か、自治体の動物愛護管理センターまで通報することで、救われる命が増えることを願うばかりです。
都道府県知事による指導、助言、報告徴収、立入検査等を規定
飼い主に対し、知事が指導や立ち入り検査を行うことができるようになりました。
これも前述の虐待と関連する改正となります。
行政の介入ができることにより、一定の抑止力が期待されます。
適正な飼育ができていなかったり、虐待が行われていたりしても、施す手立てがなかった状況が改善されてくると良いなと思います。
マイクロチップの装着等
繁殖販売業者は、マイクロチップの装着と登録をしなければならない。
今後新たに、ブリーダーやペットショップなどから迎え入れるわんこは全員、マイクロチップが装着された状態だということです。
もしマイクロチップが装着されていない場合は、違法業者となりますので、事前に確認する必要がありますね。
現在、マイクロチップが装着されていない家族のわんこは、努力義務となります。
マイクロチップが装着されたわんこの飼い主は、登録情報の変更があった場合の届け出が義務付けられています。
住所や氏名の変更があった場合の手数料は無料ですので、忘れず手続きをしましょう。
これを怠ると、はぐれた時に戻れなくなってしまうかもよ。
マイクロチップは、直径1~2ミリ、長さ8~12ミリほどの円筒形で、体に害がない生体適合ガラスを使用した電子標識器具です。
マイクロチップには、世界唯一の15桁の数字が記録されています。
これは、ISO規格の個人識別番号で、この番号に飼い主やわんこの情報が紐づく仕組みになっています。
この情報にアクセスできるのは、自治体と警察のみだということです。
個人情報保護の観点からは安心できますが、一方で獣医師さんなどはアクセスできないなど、運用上の柔軟性に欠けるデメリットも挙がっています。
自治体調査によると、東日本大震災の時に迷子になってしまったわんこのうち、鑑札(飼い主情報)を付けていたわんこは全て飼い主の元へ戻ることができたそうです。
一方で、首輪のみ(飼い主情報なし)のわんこで飼い主と再会できたのは、わずか0.5パーセントだったとのことです。
環境省の2020年度データによると、愛護センターで引き取られた犬猫は約7万2400頭、そのうち約2万3700頭が殺処分されてしまいました。
飼い主の情報が分からない場合は、殺処分の対象となってしまいます。
そんな最悪なケースにならないよう、飼い主としてできる限りのことはしておきたいですね。
今は、どこで何があってもおかしくない時代です。
うちのわんこは逃げないから大丈夫!
室内飼いだから関係ないわ。
本当にそうでしょうか。
震災や事故、過失など、本意ではなくても離れ離れになる可能性は誰しもがあります。
事が起こってから後悔しないよう、有事について、備えておくことは無駄ではないと思います。
まとめ
今回は、難しい法改定について取り上げました。
法律と聞くだけで身構えてしまいますが、実際に調べてみると、飼い主として理解しておくべき事柄がたくさんあることに気が付きました。
表面的な情報を見聞きするだけではなく、分からないなりに理解しようとする姿勢は、大切なことだと感じました。
改正動物愛護管理法は、公布から5年後にまた、改正される予定とのことです。
2024年ですので、間もなくですね。
その際には、わんずにとって最適な対策がとれるよう、私たち飼い主もアップデートしていきたいと考えています。
世の中は、自分の知っていることだけで成り立っています。
知っていることを増やして、わんずと共に豊かな暮らしを送ることができますように。
大変さは足し算、楽しさは掛け算以上。
皆さまにとって、素敵なわんわんライフになることを願って。
参考資料、サイト
- 『改正動物愛護管理法の概要』環境省自然環境局総務課動物愛護管理室
- 『動愛法改正のふりかえりと今後の課題』シンポジウム2019レポート1,2,3 公益財団法人 動物環境・福祉協会Eva
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