「多頭飼いだと、わざわざ社会化トレーニングをしなくても良いからその点は楽そうだよね」
そのように言われることがたまにあります。
多頭飼いでは、同居犬や先住犬とのコミュニケーションを通して、ルールや社会性は身につくと思われる方もいるようです。
本当にそうなのでしょうか?
私たちも、4頭目の天(ボーダーコリー)を迎え入れた際に、そのような考えを少し持っていました。
その考えが甘かった、と後悔したのは生後1年が経った頃でした。
その後、成犬になってからの社会化トレーニングを通して少しづつ改善してきたものの、子犬期にしっかりと社会化トレーニングをしてきた子との差は大きく開きました。
多頭飼いでも、「社会化トレーニング」は必要です。
私たちが経験を通して確信した結論です。
今回は、多頭飼いでも「社会化トレーニング」が必要な理由と、社会化が出来ないとどうなるのか、についてお話しします。
あくまで我が家の例ですが、少しでも参考になれば幸いです。
犬の社会化について
社会化とは?
犬が社会に順応する力を養うことを、社会化といいます。
効果的な社会化は、子犬の心身共に健康的な発育に 長期にわたって大きく影響します。子犬期の生後数ヵ月の間に学んだことは、生涯生きていくうえでの指針となっていきます。
社会化期はいつまで?
犬の社会化は、12週齢~16週齢になるまでの子犬期に行うことが推奨されています。(※犬種差や個体差はあります。)
また、わんちゃんにが色々なことに順応しやすい期間は12週齢までとも言われています。
12週齢~16週齢というと、生後3~4か月ごろまでということになります。
母親や兄弟と過ごす時期、飼い主と過ごす時期、それぞれの期間でわんちゃんの社会性が育まれていきます。
週齢による社会化の内容
【出生~2か月ごろ】
出生後56日(8週齢)を経過していない子犬の販売は、法律で禁止されています。
この時期はを母親や兄弟と一緒に過ごすことで、犬社会のルールやコミュニケーション力を身につけます。
【2か月~3か月ごろ】
飼い主とのコミュニケーションを育みながら、色々なタイプの人(子供、男性、女性、高齢者など)にも慣れてもらいます。
また、色々な音を聞かせて、慣れてもらいます。
家の中の音(掃除機・洗濯機・インターホンなど)以外にも、下界の音(車の音・サイレンの音・人の話し声など)も沢山経験させてあげます。
テレビや動画の音を聞かせることも有効的です。
また、様々なわんちゃんとも沢山遊ぶ時間を設けることも、この時期に大切な経験となります。
※ワクチンの接種時期などの問題もありますので、動物病院やパピースクールなども利用して、慎重に行っていきます。
お散歩デビューまでは、抱っこをして外の世界に触れてもらいます。
並行して、おうちでのトイレトレーニングやしつけなども開始します。
お散歩デビューに向けて、首輪やリードに慣れてもらうトレーニングも開始します。
【3か月ごろ~】
ワクチン接種も完了し、首輪やリードに慣れてきたら、実際にお散歩をしながら沢山の体験をしてもらいます。
すれ違うわんちゃんや飼い主さんとのコミュニケーション、お散歩中に出会う沢山の自然や動物に触れ合いながら、沢山のことを学んで吸収してくれます。
社会化が出来ていないとどうなる?
適切な時期に社会化が出来ていないと、以下のような問題行動が起きやすくなります。
わんちゃんが快適に生活を送れるように、社会化はとても大切です。
とはいえ、怖がりのわんちゃんや神経質なわんちゃんもいますので、それぞれの性格や体調を見ながら、無理せず楽しみながら沢山のことを経験させてあげることが飼い主の責任だと考えます。
わが家の社会化トレーニング
我が家には現在4頭のわんずたちがいます。
それぞれの社会化トレーニングについてご紹介していきたいと思います。
凛(ウェスティ―)・海(トイプードル)・しおん(シェルティー)は、ほぼ同時期に迎え入れました。
迎え入れ際の月齢は、以下の通りです。
- 凛(ウェスティ―):生後7か月
- 海(トイプードル):生後3か月
- しおん(シェルティー):生後3か月
- 天(ボーダーコリー):生後3か月
パピースクール
かかりつけの動物病院には、パピースクール・キンダーガーデン(幼稚園)・トリミング施設がありました。
多頭飼いになるので、社会化トレーニングをしっかりしておかなければと思い、パピースクールに申し込みました。
パピースクールに入校したのは、凛(ウェスティ―)と海(トイプードル)です。
パピースクールの参加条件は生後5か月まででした。
凛(ウェスティ―)は、既に7か月を迎えていました。
しかし、凛の体格が小さいことと、海(トイプードル)が一緒だということもあり、参加させてもらうことが出来ました。
パピースクールでは、以下のような体験をさせてもらいました。
性格に合わせて、楽しくできる範囲で色々なことにチャレンジしていきます。
パピースクールに来る人も、スタッフさんも、皆とても優しいので、「初めての人も怖くない」という経験を積んでくれます。
また、誰の手からもおやつを食べることが出来れば、入院した際やホテルに預けた際もご飯を食べないというリスクが減ります。
凛と海は、もともと社交的な性格を持ち合わせていましたが、このパピースクールを通してさらに人が好きになったようです。
凛も海も、動物病院に行くことがとても楽しい経験となり、病院を好きになってくれました。
特に海は、トレーナーさん、スタッフさん、獣医師の先生に会うたびにうれしっこをしてしまうほどでした。
凛に至っては、動物病院のホテルに預ける際、飼い主のほうを振り向きもせず、尻尾を振って中に入っていきます。(飼い主は少し寂しいです。)
社会化トレーニングは大成功です。
病院開催のイベントに参加
しおんは、パピースクールには入校しませんでした。
凛と海の様子をうかがって真似をする性格の為、凛と海が平気そうにしていればしおんも平気でいられるという、多頭飼いならではの連鎖もありました。
その代わり、動物病院で開催されるイベントには積極的に連れていきました。
中でも記憶に残っているのが、「歯磨き教室」です。
しおんは、沢山の人がいる会場でも「ヘソ天」をして爆睡していました。
寝ているしおんを撫でてくれる飼い主さんもいましたが、それでも起きません。
歯磨きの練習の順番が回ってきても、寝続けていたので、結局歯磨きの実践練習は出来ませんでした。
「おうちでやってみてくださいね」ということで、しおん爆睡のまま終了です。
なんだか、社会化トレーニングはあまり必要なさそうな性格だな~と感じつつ、それでも沢山の経験をさせていきました。
病院にも、凛の診察のついでに連れていく、海の診察のついでに連れていく、などをして人と触れ合う機会を増やしました。
(診察といっても、子犬期の定期検査などで深刻なものではありません。)
沢山スタッフさんがいる施設でしたので、そこで可愛がってもらいながら、しおんは人との接し方を学んでいきました。
しおんの社会化トレーニングも、問題なく終わりました。
お散歩
凛・海・しおんの3頭は、人もわんちゃんも大好きになってくれました。
お散歩で出会うわんちゃんや飼い主さんとも上手に接することが出来ます。
においを嗅いで挨拶をし、飼い主さんにもご挨拶をします。
そして撫でてもらったりして、ご機嫌でお散歩をしてくれました。
中には気の合わないわんちゃんもいますが、ケンカになるほどではありません。
初めての多頭飼いでしたので、最初に抱いていた不安はクリアすることが出来ました。
キンダーガーデン
キンダーガーデン(犬の幼稚園)も利用します。
実家に帰省する際、子犬期の間に通っていた動物病院のホテルにわんずたちを預けることがあります。
その際に、オプションでキンダーガーデンをお願いしています。
預かってもらっている際に、他のわんちゃんたちと一緒に遊ぶ時間を作ってもらえます。
たまにしか利用できませんが、ホテル使用時には必ず利用しています。
キンダーガーデンでの様子も、写真を撮ってくれているのでどのように過ごしたのかを知ることが出来て安心です。
4頭目の油断
凛・海・しおんを、迎え入れてから約3年後。
ボーダーコリーの天を、生後3か月の時に迎え入れました。
この時には、引っ越していたため、凛・海・しおんの子犬期にお世話になった病院には通えなくなっていました。
近所に、パピースクールもなく、通うとなると往復2時間以上かかります。
天はペットショップにいるときから、人が大好きなこでした。
初めて抱っこした時も、うれしっこでびしゃびしゃになるほどです。
犬を飼っているご近所さんにもすぐに懐き、そこのわんちゃんとも上手に接していました。
家の中でも、同居犬と沢山遊んでコミュニケーションをとりながらルールを覚えていきました。
そのことに安心して、それ以上の「社会化トレーニング」をしませんでした。
完全に、油断していました。
1歳を過ぎたあたりから、天は初めて会う人・犬に対して神経質になりました。
1歳までに会ったことのある人と、そうでない人を区別して、新しく会う人とわんちゃんに対して警戒心を抱くようになりました。
今住んでいる地域が、人口の少ない地域ということもあり、新しく出会える人の数が圧倒的に少ないことも原因の一つかと思います。
もっと広い範囲に出かけて、いろんな種類の人やわんちゃんと接する機会を作れば良かったと反省しています。
成犬になってからの社会化
天の社会化トレーニングは、現在も進行中です。
子犬期のようにはいきませんが、成犬になってからでも、ある程度の社会化は可能と言われています。
ただ、根気は必要となります。
時間をかけて、繰り返し繰り返し経験させることが大切です。
天の場合は、一人ずつ平気な人を増やしていくということをしています。
しかしこれには、協力してくれる人が必要となります。
犬の扱いに慣れていて、犬が好きな人です。
犬が好きな人は沢山いますが、ここで大切になってくるのが、「犬の扱いに慣れている」というところです。
犬が好きであっても、扱いに慣れていなければ危険です。
接し方によっては、協力してくれた人にケガをさせてしまう可能性もあります。
天も、さらに人を怖がるようになってしまう可能性があります。
ここで、天の社会化の転機となった存在がいます。
それは、私たちが車を購入した際にお世話になった、HONDAの担当者さんでした。
とても犬が好きで、なにより犬の扱いがとても上手です。
初めて天と会ったときも、吠える天に過度に反応せず、天のペースに合わせて構ってくれました。
最初こそ、ケガをさせてしまわないかヒヤヒヤしていましたが、私たちは「この人しかいない!」と思い、天の「社会化トレーニング」の協力をお願いしました。
天が初めての人になかなか懐かないことを説明し、協力をお願いすると快くOKしてくれました。
以降、点検やメンテナンスでHONDAさんへ行くたびに天を連れていき、おやつをあげてもらったり、撫でてもらったりしてもらいました。
また、その店舗には犬好きな方が多いということで、他のスタッフさんも天に会いに来てくれました。
こうして天は、徐々に初めての人と会う回数が増えていき、これをきっかけにして他の場所で初めて会う人との距離も縮まっていきました。
天も、HONDAさんへ行くことを楽しんでくれています。
1年ほど繰り返していたら、天が初めての人と馴染むまでの時間が早くなっていきました。
また、初めてなのに自分から寄っていくことも増えてきました。
社会化トレーニングを通して、初めての人への恐怖心が和らいでいったのだと思います。
このトレーニングに協力してくださった方々には感謝しかありません。
天はまだ4歳です。
これからも、もっと沢山のことを一緒に経験して、「楽しいことがたくさんあるよ!」「大好きな人がもっと増えるよ!」ということを教えていきたいと思います。
まとめ
わんちゃんにとっても、飼い主にとっても、社会化トレーニングは大切です。
多頭飼いをしているから、他のわんちゃんとのコミュニケーションは問題ない、ということはありません。
家の中と外では世界が違います。
同居犬と仲良くできても、外で会うわんちゃんと仲良くできるとは限りません。
子犬期に迎え入れることが出来たのならば、是非その期間に沢山のことを経験させてあげてください。
様々な事情で、その時期を逃してしまった場合でも、成犬になってからでも社会化は可能です。
もちろん子犬期のようにはいきませんが、飼い主が諦めずに根気強くいれば、少しずつ改善していきます。
時には、飼い主だけでは解決できないことが出てくることもあるかと思います。
そんな時は、思い切って他人に相談してみてください。
私たちがそうであったように、きっと助けてくれる人と出会えます。
わんずたちが、少しでも快適な犬生を送れるように。
それが私たち飼い主の一番の幸せです。
大変さは足し算、楽しさは掛け算以上。
皆さまにとって、素敵なわんわんライフになることを願って。
参考資料・サイト
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